昔あったげろ。あるどこへ昔話じょうずなじさまがあったと。あるどき、じさまが病気になって、死んで、えんま様の前へつれていかれたと。えんまさまが、
「おまえ、家へいた時、何していた」
ときくんだんが、じさは、
「私は、家にいる時、話が上手で、大ぜいの人笑わせたり、喜ばしたりしたんだすけに、極楽にゆかせてもらえますこてねぇ。」
というたと。ほうしると、えんまさまが、
「そらならぬ。おまえのようなうっそばなしばっか人に聞かせて、地獄行きだ。」
といったと。じさまは、
「それは、とんでもない。そんげのこといわんで、極楽にやってもらいたい。」
といったと。えんまさまは、
「じぁ、おれのそばにいる鬼は、生まれてからこの方、一度も笑ったことのない鬼だが、この鬼を笑わせれば、極楽へやってもいい。」
というたと。
「それはありがたい。それはわけないことだ。」
というて、じさまは、鬼のそばへよって、何いうたかわからんろも、鬼はその話をきいて、ころんだり、起きたりして、笑ったと。えんま様は、たまげて、
「おまえ、今、この鬼に何いうてこんげに笑った。」
と聞いたら、じさは、
「なに、特別のこといったわけではありません、鬼は、来年のこといえば、そんま(すぐ)笑います。」
というたと。
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