「越後瞽女唄・葛の葉会」は、瞽女唄伝承を目的に、最後の越後瞽女といわれる小林ハルさんの指導を受けた竹下玲子師匠のもと、平成7年9月に開講した瞽女唄教室のメンバーが平成11年12月に立ち上げました。現在のメンバーは3人です。
■祭文松坂
■伝統の瞽女唄
秋晴れの九月十五日瞽女唄教室一周年記念一般公開を参観に行きました。高度の難聴の私ですが、子供の頃我が家での瞽女宿のことを時々懐かしく思っていたものです。
哀調切々の興が好きで、たまらなかったものですから竹下さんの公演の度に何度も聞きに行きましたが、三味線の音が入り歌詞は全く判りません。それで事務局から運良く原稿を頂いて全文を暗記しました。
歌詞が分かればよくしたものです。語りがはっきり分かり情景までが、見えてくるように体が震える程の感動に打たれました。本当に素晴らしかったです。それにしてもこの教室は一年間しかも、月にたった二日のお稽古だそうです。よくもあの長い「葛の葉子別れ」を唄いこなされたものと深い感銘を受けました。竹下先生のご指導の賜でしょうが可愛らしい小学生の早口言葉もとても上手に出来ました。昔の瞽女さんは何年も修行したり、五十日もの寒稽古をして、はじめて人前で唄わせてもらったのだと聞きましたが、この教室の皆様がこんなに早く上達されて初公開をなさったのには、つくづく感心しました。
どうかこれからも一人の落伍者もなく瞽女唄を後世に語り継いでいかれますように教室の発展を心よりお祈りもうします。
尚、仕掛け人の高橋実先生がこぼれるような笑顔をしておられました。
弾く人も施す人も聞き惚れる
葛の葉子別れ咳一つなく
長岡瞽女の頭、山本ゴイの菩提寺、長岡市草生津町の唯敬寺で瞽女唄教室が始まったのは、平成七年九月のことだった。今年は、瞽女唄教室開講十周年に当たる。この構想は、会長初め、若林一郎氏も持っていて、開講に当たって、私は、稽古用三味線五丁を三島屋和楽器店から購入して用意した。九月九日、八人の受講生をで、開講式があった。当時のネットワーク通信を見ると、「お辞儀からみっちり特訓」という見出しで、新潟日報の記事がコピーされている。写真には、幼稚園だった佐々木理恵さんと小学校一年だった金川真美子さんが映っている。その前々日の新潟日報「自由席」で講師の竹下玲子さんは、「言葉に始まって、声に終る瞽女唄ですから、あくまでも声にこだわり、体に染みこませていって欲しいです」と語っている。この十年の間にいろいろな人が教室に出入りして、めまぐるしく人が変わった。それでも子供たちは変わらなかった。その瞽女唄教室も平成十一年に、竹下さんが横浜へ帰って終講となった。五年間の教室だった。その年に受講生が中心になった「越後瞽女唄葛の葉会」を発足させた。今年は「葛の葉会」発足五周年の節目に当たる。
あの真美子さんは、今年高校二年生、理恵さんが高校へ進学する。しかも、二人の瞽女唄へ賭ける情熱はこのネットワーク通信でお読みいただけるであろう。今年理恵さんは、高校の推薦入学のレポートに「瞽女」を取り上げたという。いよいよ名実共に瞽女の伝承者に育ちつつある。頼もしい限りである。実のところ、この二人が、どのように成長してゆくか。最初は心配だった。小学生のうちは、親がやれといえば、それに従っていても、中学高校になって、親に反発して、親よりも友達が重要な位置を占める年頃になって、瞽女唄を続けるかどうかの決断を迫られる時期になると予想していた。瞽女唄という若者にとってまったく未知な世界を知ることで集団から外されるのではないかと危惧したためである。しかし、二人がこの瞽女唄を続けると堅く決意しているのを見て、すっかり安心してしまった。このためには、ご両親初め、指導に当たってきた横川恵子さんなどの並々ならぬご苦労が会ったことと察しられる。これからこの二人はどういう風に育って行くのか、楽しみである。
この節目に当たって、これからの葛の葉会をみんなの力で盛り立てて行きたい物である。そのためには、是非口演の機会を作ってもらいたい。人前で唄うことが最大の練習だということは、前から言われてきたことである。どんな小さな集まりでもよい。機会を作って瞽女唄を大勢に皆さんから聞いてもらいたい。そして、葛の葉会の皆さんのますますの活躍と精進を期待したいものである。