昔、二本柳に庄屋をしていた「はば」という家があって、そこで三十三年の法事をしるてがんで、蔵にあるものを家に運びこんで、いい法事したと。そこに家に、ちいとあったかい下男がいて、その日、こっぴどく家の人におこられたと。ほうしたら、夜中に、その下男が腹たちまぎれに、はばの家へ火つけてしもうたと。先祖からつたわった宝物もくるくるやけになってしもうたと。
その時、馬屋の馬も焼け死んでしもうて、はばの家は、それからびっぼうしだしたと。
つぐの朝、火事のあとかたづけしるとってきてみたら、小さい足跡がついていたてんがの。
「こらぁふしぎ、なんで火事場へ、人の足跡なんかあるろう。」
と村の人が、その足跡についていってみたら、村の人がまつってある地蔵様の堂の中にその足跡が消えたと。
「こらぁ、おかしいなあ。」
と思って、村の人が中へはいってみると、地蔵様の片目が、つぶれたように怪我していたてんがのう。
「はあ、そうせば、あの火事場で働いて、火を消して、他のところへ火が着(つ)かんようにしてくれたがんは、この地蔵様らったがんだなあ。」
というて、その地蔵様のことを、火伏せの地蔵様というたと。
小国のことばじゃ「ヒグセ」というろも、それが、火伏せとやっとわかった。これは、マゴジサからきいた話だ。それから、火事よけの地蔵様というようになった。
その時、やけ死んだ馬が、あんまりかわいそうらてがっで、二本柳の土手に馬頭観音がたっているが、焼け死んだ馬の骨も埋めてたったということらの。
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