昔があったてんがの。
秋山というとこはのう、山の中の山の中の、ごうぎな山の中らと。そこへつぁつぁとブツというせがれが二人して住んでいたと。かっかが死んで、明日が一周忌になるんだんが、つぁつぁが、
「ブツブツ、明日は、かっかの一周忌にならんだすけ、なあお寺へいってくれや。お寺の和尚さんは、黒い着物着ているすけ、すぐわかるすけ『あしたは、おらこのかっかの一周忌らすけ、お経一巻あげてもらいたい』というてこいや。」
というたと。ブツは「あい、わかったぜ」というて、家からとんでいったと。
ほうして、お寺へいってみたら、お寺の屋根のてっぺんに、黒いカラスがとまっていたと。ブツは、「これがつあつあがいうた和尚さんだな」と思うて、
「明日、かっかの一周忌らすけ、お経一巻あげに来てくらさい。」
というて、家へ来たと。家へ来ると、つあつあが、
「なあ、よくたのんできたかや。」
というんだんが、ブツは、
「よくたのんで来たぜ、和尚さまは、かあかあというていたぜ。」
というだと。つあつあは、
「ばか、そら、からすというんど。じゃまあお前じゃ用事が足らんすけ、おれがたのみにいぐが、なあ家でまんまたいてくれや。まんま炊けやいいばっかにしていたすけ。」
というて、お寺へ出かけていったと。
ブツは、ぼよをほしょって、かまどの下の火燃やしていたと。ほうしたら、そのうちにかまがぷーっと噴いて、ブツブツという音がしたと。ブツは、自分の名よばれたと思うて、そのたんびに返事していたと。いくら返事しても、ブツブツというて、とまらねんだんが、ブツは、ごう煮やして、釜の下の灰をまんまの中にあけてしもうたと。
そこへ、つぁつぁが、
「まんまできたかや。」
ともどってきたと。ブツは、
「あんまりブツブツというんだんが、ごうにやして灰入れてしもうた。」
というたと。つぁつぁは、
「ばからなあ、そうせや、法丈さまが来てもまんま食うてもらわんねねか。じゃまあしかたないすけ、おれがまやの二階へ、甘酒つくっていたすけ、まやのそら(馬屋の天井)から、あまざけおろそうと思う。なあは、それを下でとってくれや。」
というたと。ほうしてまやのそらへあがってわらの下から、かめ出して、
「そら、ブツ、かめおろすすけ、けつしっかりたがけや。」
そういうたと。ブツは、自分のけつしっかりたがいて、つぁつぁが、
「しっかりたがいたか。」
というんだんが、ブツは、のうか一生懸命に自分のけつおさえたと。上の方じゃつぁつぁが「じゃいいかや」というて、手をはなしてしもうたら、かめは、下へガチャンと音がして落ち、あまざけいんなこぼれてしもうたと。
いきがすぽーんとさけた。
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