石永 あの時印象に残ったのは、「塞の神」で子どもたちが勧進をやりますね。各農家を尋ねて稲わらをいただいて運び、実際に「塞の神」を作る手伝いをする。ああいうところが今はとてもできることじゃないんで、ああいう大人と子供の触れ合う場というのが形が変わってもいいから、もっとあれば良いなあと思いますね。子供たちが一所懸命お手伝いしながら、お小遣いもらったりお米もらったりして、持ち寄ってあの中で食べる。すごく印象に残っています。
行事に参加することで、子どもたちが遊びながら大人や友達同士の付き合いの仕方がわかったりする、そういったことが民俗行事の一番いいところなのではないかと思いますね。それをどういった形で引き継いでいくかというのが非常に問題です。
鈴木 なかなか難しいことですね。
映像を交えながら3人の方から3つの昔話を語っていただいていますが、今振り返ってみてご苦労があった点をお聞かせ願えますか。
石永 話の内容そのものの良し悪しはよくわかりませんが、昔話は水沢先生がこれとこれとこれというふうに決められました。語り部の三人の方は、真ん中でお話しいただいた星野ハルさんは鈴木先生のご紹介で、高橋ナヲさんと下條登美さんは水沢先生のお知り合いということで、出演者選びでは苦労しませんでした。最初の「みそ買い橋」は、アラビアンナイトにもでてくる物語で、下條さんが語られた「馬と犬と猫とにわとりの旅」はブレーメンの音楽隊で、日本で語られる話は外国にもあるんだよっていう認識をもって、この二つを選んだそうです。ナヲさんは当時85歳でしたか、ナヲさんの話し方、子供との接し方、話の進め方、すごくいいなあと思いました。下條さんの場合は教科書的なお話しの仕方をされる方だなと感じたものですから、話はそのまま残して、絵は漫画にしたんですが、切り絵での表現は初めての経験で、アニメーターは大変な苦労であったと思います。