長岡瞽女の瞽女頭・山本ゴイの住まいである大工町(現、日赤町一丁目)の瞽女屋で瞽女本尊弁才天を祭る妙音講が開かれた。その儀式を「瞽女唄ネットワーク」が再現し、平成8年5月、唯敬寺(えいきょうじ)を会場にして50年ぶりに復活した。
かつて瞽女屋で行われた妙音講は、唯敬寺住職が瞽女頭山本ゴイの先祖を祭る仏壇にお経を上げ、参集の瞽女一同がお参りした。そのあと住職が「瞽女御条目」を読み上げるので、かしこまって聞いた。瞽女御条目には、瞽女の元祖は嵯峨天皇の皇女相模宮姫だとする瞽女縁起や、瞽女の守るべき規約、掟などを書いた式目(条目)が書かれている。それが終わればお斎(とき)となる。お斎には幾番膳も出て、みな順次席に就いて頂いた。
お斎が終わって一段落すると、今度は紋付を着た山本ゴイや重立(おもだち)の師匠たち四、五人が前に出て三味線を揃えて京唄(地唄)の長唄もの「桜づくし」と「行く春」の二曲を歌い、弁天様に奉納した。それが終れば、若い瞽女達を中心に自慢の瞽女唄を披露し、美声を競った。
唯敬寺を会場にして復活した今日の妙音講では、「桜づくし」だけを奉納している。この曲は、江戸前期の地唄(上方唄・京唄)の作曲家、演奏家であり、長唄の創始者でもある佐山検校(〜1694)の元禄時代の作と言われている。妙音講が桜の満開の時期に行われるので、この曲が選ばれたようである。多彩多様な桜の名が表現されており、春の盛りを謳歌するめでたい唄である。
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※妙音講に参加くださいました三条市の難波英一様からご提供いただきました。
難波様のフェイスブックです。登録されている方はご覧ください。
演 目 ・ 解 説 | 出 演 者 |
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鈴木会長挨拶 瞽女唄ネットワーク会長・鈴木昭英が、妙音講や瞽女唄について簡単な解説をいたします。 |
挨拶:鈴木昭英 解説 を聴く 6分55秒 mp3(6.34MB) |
瞽女式目 瞽女の由来と戒律や掟を記した御条目を唯敬寺三条正憲住職が格調高く謳いあげます。瞽女は由緒ある職業で、普通の農民とはちがうのだという職業の自覚を持たせるために作られたといわれています。 |
朗誦:三条正憲・唯敬寺住職 ご条目朗誦 を聴く 9分14秒 mp3(8.46MB) |
京唄 桜づくし この妙音講では「桜づくし」のみを奉納しています。この曲は江戸前期の地唄(上方唄・京唄)の演奏家・作曲家で長唄の創始者として江戸で活躍した佐山検校(-1694)の元禄時代の作品です。妙音講が桜の花の咲く頃行われたので、この曲が演奏されたようです。桜づくめの文句で、多様多彩な桜の名前がたくさん出てくるめでたい唄です。 |
唄:横川恵子・金川真美子 京唄 桜づくし を聴く 19分13秒 mp3(17.6MB) |
門付け唄「岩室」 長岡瞽女が地元の中越地方を旅するときに歌った門付け専用の唄。男女相愛の情を七七七五の口語文で表わした都々逸風の唄。三味線の弦をゆるめ、ジャンコジャンコジャンコと低音の調弦で早めて歌う。文句の中にイヨという合いの手が入るのでイヨ節と称する人もいた。最後の瞽女金子セキさんと中静ミサオさんは、民謡をこの曲節に合わせて門付けに歌うこともした。 |
唄:横川恵子・金川真美子 岩室 を聴く 1分03秒 mp3(0.98MB) |
祭文松坂「八百屋お七」一の段後半〜二の段 瞽女唄の「八百屋お七」は、紀海音(きのかいおん)作の浄瑠璃(世話物)の脚本に基づいている。「忍びの段」と「火炙りの段」が物語の山場であるが、「忍びの段」は、偶然、火事で避難した寺で会った小姓の吉三(きちざ)に恋い焦がれ、恋しい吉三に会うため、深夜、駒込寺の学寮に忍びこんで、契りを交わす激しい恋の場面。「何々づくし」や数字の畳みかけ等の口説きを特徴づけることばが随所に使われている。 |
唄:室橋光枝 八百屋お七 を聴く 23分41秒 mp3(21.7MB) |
発ち唄「おけさ」 もとは九州の「ハイヤ節」が船頭などによって佐渡の小木港に上陸して「小木おけさ」となり、その後変化して現在の「佐渡おけさ」となった。瞽女唄では「佐渡おけさ」を替歌にして唄っている。 |
唄:横川恵子 おけさ を聴く 3分12秒 mp3(2.93MB) |
お手玉うた・萬歳 2018年に金川真美子さんを先生として子どもたちに瞽女唄を伝えようと瞽女唄教室を開き、同年11月17日に長岡グランドホテルで「萬歳」を披露することができました。今日は「お手玉うた」もあわせてお聞きください。生徒さんは小学2年生の、小西まなみさん、小暮ゆめかさん、中野せらさんです。 |
唄:金川さんと子どもたち お手玉うた・萬歳 を聴く 10分45秒 mp3(9.85MB) |
2018年、子どもたちに金川真美子さんが瞽女唄を指導する会、小春会(仮称)が結成されました。11月17日(土)長岡グランドホテルにて、晩さん会の前に「萬歳」を披露する機会をいただきました。
子どもたちのリハーサル風景の録音(11月12日)と本番で披露された小春会の「萬歳」、金川真美子さんと須藤鈴子さんによる「伊勢音頭くずし」をお聴きください。