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富川蝶子さんのむかし話「山方のばかむこ」

「山方のばかむこ」 mukasi


富川蝶子

山方のばかむこ

富川 蝶子

 あったてんがの。むかしある山方のこんだども、ちっとばか頭の弱いあんにゃと母ちゃんが住んでいたってんがの。いくら弱いたって年ごろになれば世話する人がいて里方の村から嫁が決ったっての。母ちゃんもあんにゃも喜んでいたども、まだ祝言がすんでいないってがんに一見に招ばれたってんがの。母ちゃんが心配して仲人さんに
「おらこのあんにゃは、ちっとバカでよそへよばいて行ったって挨拶するすぶも知らんがんだが、どうしょうばいの。」
 と、言うたっての。そうしたら仲人さが、
「母ちゃん心配しんたっておれに任せておいてくらっしゃい。」
 と、言うてあんにゃにはこう言うたっての。
「あんにゃや、一見によばいて行ったらない、先の人が何か言われたら、俺がこの紐を引っぱるすけ、そんどき、さようでございます。と、言うがだど。大事のひもっこだすけ、どっかへいつけておけや。」
 と、言うて聞かせたっての。あんにゃは
「こんげ三尺か四尺ぐらいの紐っこがそんげん大事ながんだろうかな、そんげだいじのがだば、おれも大事のどこへいつけておこや。」
 と、思うてチンポコの先へひもを結びつけておいたっての。そうして嫁の家へ着いたと。嫁の家の人が出てきて、
「さあさ、山方のあんにゃさよう来てくんなした。今日は天気になってよかったの。」
 と、いわれたってんがの。そうしたら仲人が紐っこの尻尾を持っていたげでキツンと引っぱらいたっての。あんにゃは、そらきたってがんできかせらいた通りに
「さようでございます。」
 と、返事したってんがの。そうしたら又
「さあさ上って火のはたへ当ってくんなさい。ヘェ秋の取り入れは終ったかいの。」
 と、家の人が言うんだんが又、仲人がキツンと引っぱったっての。そうしたらあんにゃが、
「さようでございます。」
 と、返事するすけ仲人は「これはいい具合だな。」と喜んでいたども、しょんべんが出とうなってその紐をそこへおっぱなして便所へ行ったてんがの。そこへそこの家の猫ができて、その紐にじゃれはねたっての。あんにゃは猫が引っぱるってがんに返事しんばねと思うて誰も何も言わんてがんに
「さようでございます。」
 と、言うがだと。家の人はどうへがだろと変な顔して見てると猫が紐にじゃれるたんびに
「さようでございます。さようでございます。」
 と、言うてるっての。猫はますますじゃれる。あんにゃは「さようで、」「さようで」「さようで、」「さようの先がもげそうだ。」
 と、とうとうひっくり返ってしもうたってんがの。
いちごポーンとさけた。


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