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富川蝶子さんのむかし話「運定めの神様」

「運定めの神様」 mukasi


富川蝶子

運定めの神様

富川 蝶子

 あったてんがの。むかしある村の鎮守様へ旅の大工どんが宿借りして泊っていたってんがの。ほうして夜中になったらチンチンチンと鈴の音がして
「今夜これからどこそこへ子供が生まれるんが行ぎましょういの。」
 と、言うて誰かが迎えに来らいたっての。ほうしたら鎮守様が
「そうかの。それはご苦労だの。だども今夜おれんどこは思いつけもないに、お客がとれたんだんがおら留守にしらんねすけ、おまえさん行ってきてくんなさい。」
 と、言われるってんがの。ほうしたら迎えに来らした神様が
「そいじゃ、おれは行ってくるこての。」
 と、言うて又、チンチンと鐘の音がして神様が
「今、行って来たいの。無事女っ子が生れたいの。」
 と、言わしたっての。
「そうかの。女っ子だっけかの。それでその子の運はどうだろうかの。」
 と、きかれたっての。
「それがの、今、お前さんどこへ泊っている男の人の嫁になる運だと出たがの。」
 と、言われるってんがの。それを聞いた大工どんはたまげてしもうた。
「おら今二十才だてがんに、たんだ今生れたばっかの子供が嫁になるなんてなじょんしょうば。そんげん子供ははよ殺してしまわんばんな。」と、思うて夜が明けるんを待っていて、そこの家へ行ってノミを出して様子をうかごうていたっての。そうしたら母ちゃんがボーをねせて一人で便所へ行くげで立って行ったっての。大工は「ようし今だ。」と赤っ子のひたいをノミで切りつけたっての。「オギャァオギャァ。」とボが泣くんだんがたまげてそのまんま逃げてきたってんがの。
 それから大工はいっこう嫁がなくて一人で暮していたってんがの。二十年もしたら人が世話してくれてやっと嫁もろうたっての。その嫁がいつも前髪をさげているんだんが大工がきいたっての。
「んな、どうしてそんげんして前髪を下げているがだ。」
「おら、ひたいにハゲがあるすけそれをかくしているがんだ。」
 と言うて髪を上げて見せたっての。大工は
「んな、そのハゲどうしてできたがだや。」
 と、きいたら嫁が、
「おら生れたばっかのどき、母ちゃんが便所へ行ったすきに誰かに切られたがだってこんだいの。」
 と、言うたっての。大工は忘れていた二十年前のことを思い出して「あゝそういがんだか。あんどきおれが殺そうとした赤っ子がやっぱりおれの嫁になったがだな。人間ってや生れたどきから運や縁が決っているってこんだがほんとうのこんだな」と、思ったってこんだいの。
 いちごポーンとさけた。


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