あったてんがの。昔、太田の村かんさまの天狗岩のあたりになじょんかでっこい杉ん木があったてんがの。あんまりでっこなってじゃまになるんだんが、その大杉の木を切ることになったっての。山がたの木びきどんが頼まれてやって来て、太田のある家へ泊って木を切りに行ったてんがの。一日中かかったども切らんねかってほうして、そこらへ木っぱをちらかしてそのまんま帰ってきたっての。
次の日行ってみたれば、きんなちらかしてきた木っぱが又、元通りにペタンペタンとくっついているってんがの。
「はあてまあ、おかしなこんだ。」と、思うてまた一日中かかっておのをうちこんでみるども、とうとう切らんねかったてんがの。そいで又、そのまんまにして帰ってきたっての。その日の晩方旅の六部どんが、村上様へ宿借りして泊っていたってんがの。夜中になったら、ならの木だのくぬぎの木だのくすの木が出てきて
「杉どん杉どん、おまえ毎日まんち痛い目に合うてほんに気の毒だのし。おいら見舞いにきたれ。」
なんか言うてちらかっている木っぱを元通りにしてくっつけていたっての。
そこへずくなしの木が来て
「杉どん杉どん、おらも見舞いにきたれ。」
と、言うたとの。そうしたらほかの木が
「なんでや、んななんか木の人数でなんかねいねか。」
と、みんながバカにしたってんがの。そんどきゴーと風が吹いてきたっての。そいでみんなが帰って行ったってんがの。ずくなしの木は村かんさまの縁側へけつついて休んでいたっけが
「あんげことしていたってもいつまでめいてもあの木は切らんねこてや。おらいいこと知っている。一日中で切った木っぱをんな燃やしてしまえば二日めにゃ切ってしまえるがんに。」
と、独り言言うていたってんがの。それを泊っていた六部どんが聞いていて「こらあまあいいことをきいた。」ってがんで、夜が明けるのを待っていて木びきどんの泊っている家へ行ってそのことを聞かせたっての。そいで木びきどんは喜んで一日中で切った木っぱを上りしなに、んな燃やしてきて次の日残っていた分も切ってしもうたてんがの。それからその大杉のたたりか何だかわからんども、その木びきどんの泊った家は長いことあんまりいいことがなかったてんがの。そいで村の人は神様の木なんかやたらに切らんねもんだと言うていたってこんだいの。いちごポーンとさけた。
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