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富川蝶子さんのむかし話「どっこいしょ」

「どっこいしょ」 mukasi


富川蝶子

どっこいしょ

富川 蝶子

 あったてんがの。むかしあるどこへ貧乏のかっかとあんにゃがいたっての。稲刈もおえたし、あんにゃが孫ばさまの家へ遊びに行ったてんがの。ばさまは喜んで
「あんにゃ、あんにゃ、よう来てくいた。ちょうど今おれがうまいもんこしょうていたどこだいや。いっぱいこと食ってくれない。」
 と、言うて団子を出してくれたっての。
あんにゃは、はじめて見たってんがの。
「ばあばあ、これはいったい何というもんだい。ばっかうまいもんだのし。」
 と、きいたっての。ばさまはたまげて
「んなはまあ、こんげんもんでも食ったことがないがだかや。可哀相げだない。これは団子とゆうもんだど。いっぺこと食いや。」
 と、言うたっての。めぐらにあんこがついていてばっかうまいんだんが、あんにゃは喜んでこんだかっかにこしょうてもらわんばんなと思いながら食っていたってんがの。そうして晩がたになったすけ
「ばあばあ団子はうまかったで。また来るすけのし。」
 と、じゅんぎを言うて帰りしなに、
「おれは、頭が悪れいすけ団子を忘れると大ごとだんが道道言いながら行がんばな」と考えて
「だんご、だんご、だんご、だんご。」
 と、言いながらあいんで来たっての。そうして家の近ままで来たらでっこい水たまりがあるってんがない。そいであんにゃは
「どっこいしょ。」
 と、言うてまたいだってんがの。ほうしたらへえ団子を忘れて
「どっこいしょ、どっこいしょ、どっこいしょ、どっこいしょ。」
 と、言いはねたってんがの。そうして家へとび込んで
「かっかぁ、今来たで。ばあばがのし、ばっかうめいどっこいしょってもん、こしょうてくいらいたで。こんだおまいもこしょうてくれいし。」
 と、言うたっての。かっかあがたまげて
「なんだってい。どっこいしょなんて何のこんだや。おら見たことがないど、このばか者が。」
 と言うてあんにゃを押し返らがしたってんがの。あんにゃはそばにあった柱にごっつんとぶつかったっての。
「イテテイテッ。痛いねかし。」
 と、言うてあんにゃが額をなでているうちに団子みとうのこぶたんが出来たってんがの。それを見てかっかあが
「あいやあ。なじょんしょうがない。だんごみとのこぶが出来たねか。」
 と、言うたとの。そうしたらあんにゃがてまえのひざっかぶをパチンとたゝいて
「あぁあ、やっとわかったいし。そのだんごとゆうもんだいし。」
 と、言うたってんがの。いちごポーンとさけた。


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