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富川蝶子さんの昔話「笑うという漢字」

「笑うという漢字」 mukasi


富川蝶子

笑うという漢字

富川 蝶子

 あったてんがの。昔むかしあるどこへ神様が集って漢字を作っていらしたってんがの。いちは横に棒を一本で「一」にしようねか。には、そんにもう一本足すことにしょうて。だども同じ長さではあんまり芸がないすけ、上の棒をちっと短こうしようて。ひとは、ひとらでは生きらんねがだすけ両方から支えて人て字にしようて。なんかいうて次々に漢字ができていったがだっての。そうして笑うという字になったっての。
「さて、わらうという字だすけ、ちったあおかしげにしんばならんな。」なんて言うて皆で考えるども一向いい考えが浮かばねっての。そいで
「まあ、こんげ続けて考えてもどうしようもねえが、こゝらで一休みしようて。」
「そうだの。一ぷくだ、一ぷくだ。」
 なんか言うて、秋の天気のいい日だすけ雨戸をクヮラクヮラ開けて縁側へ出て一ぷく休みしていらしたってんがの。そのお庭に豆の種がざるに入れて干してあったとの。そこへ犬が一匹とんできて、ちょっこんとざるのふちを踏んだっての。そうしたらざるがひょこんととび上って犬の頭にひょいとかぶさったてんがの。犬は顔に豆の種をくっつけてあっち見こっち見しているっての。いやへぇそれがあんまりおかしくてみんなが「アハハハハアハハハ。」と笑ったっての。
そんどき一人の神様がパチンと手を叩いて
「ああ決った。これに決めようて。犬がざるをかぶった、あんまりおかしくてみんながアハハハアハハハと笑うたんが、ざるは竹で出来ているすけ竹かんむりだ。それに下へ犬って字もじってくっつけて笑うって字にしようて。」
「そうだ、そうだ、書いてみればおかしげになるのし。」
 なんか言うて笑うという字ができたっての。
さあて、犬のおかげで笑うという字が出来たんが犬になにかほうびを出さんばんということになったっての。まあほんだかうそだか知らんども、その時分犬の足は三本しかなかったがだってんがの。そいで犬は足が三本でとんで歩くに不自由だろうが、ほうびに足を一本つけてやろうやというて足を一本もろたっての。さあ、犬は喜んでよろこんで神様からつけてもろた足にオシッコ引っかけたら申し訳けがないってがんで今のきオシッコするとき一本の足ふっ立ててはじくがんだっての。
 これでいちごさかえ申した。


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