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富川蝶子さんの昔話「キツネとカワウソ」

「キツネとカワウソ」 mukasi


富川蝶子

キツネとカワウソ

富川 蝶子

 あったてんがの。むかしあるどこへキツネとカワウソがとなり同志に住んでいたってんがの。カワウソは毎日毎日川へ行ってせっせせっせと魚をとってきては干物にしたり焼いて食ったりしていたっての。いつもプンプンといい匂(に)をさせているんだんが、キツネは昼頃になるとけなりてせつないんだんがカワウソの家のあたりを行ったり来たりしていたっけてんがの。ある日カワウソが
「キツネどんキツネどん、今うまい魚が焼けたどこだがおまえもオラとこで昼飯食っていがんかへ。」と言うたとの。キツネは食いとうて食いとうてせつなかったがんだすけ
「われどもそうせば招ばれていこうかな。」と言って喜んでいっぺこと食って
「ああ、うまかったで。今夜はオレがごっつおしておくすけカワウソどんオラとこへ晩飯食いにきてくらっしゃい。」
と、言うて帰っていったってんがの。そうして晩がたになったんだんが、カワウソは
「キツネどんオラよばれいてきたで。」と言うてキツネのどこへ行ったっての。キツネは玄関の柱につかまって天井ばっか見ていいて返事をしないがだと。それでカワウソは
「こんげんがにかもうてはいらんね。」
と、言うて家へ帰ってきて残りもんを食ってねたと。
そうして次に日また川へ行って魚とってきて干物にしたり焼いて食っていたってんがの。そこへまたキツネが
「いや、カワウソどん夕べは丁度天井守が当ったんだんが返事もしらんねでわるかったのし。」
カワウソは本気にして
「そうかへ。それは大事だったのし。今日も魚が焼けたすけ食って行ってくらっしゃい。」と言うてたらふく食わせてやったてんがの。キツネはまた
「ああまた大ごっつおになった。今夜ばっかしゃ夕飯によばいてきてくらっしゃい。」
 そういうんだんがカワウソは夕方になったすけでかけたって。
「キツネどんオラよばいてきたで。」と、行ったと。そうしたらキツネはこんだ火のはなの炉えんぶちにつかまって下ばっか見ていていいて返事をしないってんがの。カワウソはまた
「こんげんがにまもうていたってしようがない。」
と、家へもどってきて残りもんを食ってねたっての。
次の日又、カワウソは魚いっぺいこととってきて焼いて食っていたっての。そうしたらまたキツネがきて 「いやー、カワウソどん夕べは丁度いろり火守が当ってたんだんが返事がしらんねでわるかったのし。」 と、言ったと。カワウソは
「そうかい。それはまあごくろうだったのし。」
と、言うて知らん顔して魚をくれんかったっての。そうしたらキツネが
「カワウソどん、おまえさは魚とることがばっか上手だがどうやってとられるかオレに教えてくんねかえ。」
と、言うすけカワウソが
「魚とるなんか何もぞうさもないよし。夜のけのいい晩におまえのしっぽの先に馬のくつをいっけて川の中へたらしてみたがい。面白いほどくっつくすけ。」
と、きかせたとの。キツネはこらあいいこと聞いたと思うて月夜の晩にしっぽに馬のくつをいっけて川ばたへ行っててまえのしっぽごと半分も水につけておいったっての。
そのうちにグッツングッツンとしっぽが引っぱられるんだんが
「あっ、こらあいっぺい魚がくっついたなァ。もっとくっつくように、もうちっとばかがまんしていろうや。」
と、思うてそのまんま、さぶいってがんにがまんしていたってんがの。そのうちに夜が明けてきてあたりが明るくなってきたっての。そうしたら子供が五・六人犬をつれてシミ渡りにきたっての。
「シンパツショウヤ、ショウヤのカカがねててしょんべんたれて隣のカカにかずけたかずけた。」なんておもしい唄うたいながら来たってんが、犬がキツネを見つけて吠えるってんがの。子供が
「あっ、あこへキツネがいるいやー。」なんていうてとんでくるんだんがキツネは「さあ大ごとだ。はよ逃げんばならん。」とグツングツンとしっぽを引っぱるども水がこおってしみてしもうていいて、ぬげねってんがの。犬と子供はとんでくる。しっぽは抜げね。キツネは「魚もフナも何にもいらんソーソーのこんだがぬげてくれスッコンコンスッコンコン。」とグツングツンと引張ったりしてたら、しっぽがポッキンおっぽしょれて血だらまっ赤になって山へ逃げて行ってしもうたってこんだ。
これでいちごポーンとさけた。


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