あったてんがの。むかしあるどこの山ん中へ正直な炭やきがいたってんがの。
その炭やきが、初夢にいい夢を見たってんがの。その夢はここから三里ばか行ったどこへ町があって、その町のまん中に川が通っていて橋がかかっている。その橋の上に立っているといいことがあるって夢だったてんがの。炭やきは喜んで夜の明けるのを待って町へ出かけて行ったてんがの。ほうしたら、やっぱり町があって川があって橋があるんだんが
「ああ、この橋のこんだな。」と思うて立っていたってんがの。そうして晩方になるども何にもいいことがなかったてんがの。それでその日は帰って、また、次の日に出かけて行ってその橋の上に立っていたってんがの。一日中立っているどもやっぱり何でもいいことがないかったっての。またその日も帰って三日目の日、また出かけて行ってその橋の上に立っていたってんがの。日が西の方にかたむいてきて夕方になってしもうた。炭やきは、
「あーあ、また今日もいいことはなかったな。」と思うていたらその橋のたもとに一軒のとうふ屋があって、そのとうふ屋の主人が出てきたってんがの。
「おまえさは昨日も今日で三日もここに立っていられるがいったい何しに立っていられるがだい。」と、聞かれるんだんが炭やきは
「オラ、初夢にここへ立っているといいことがあるという夢を見たすけ、こうして毎日ここへたっているがだいの。」
と、言うたと。とうふ屋の主人は
「オレも実は初夢を見た。オレの夢はここから三里ばか行った山の中に炭やきがいて、その炭やき小屋の後に白い花の咲く椿の木があって、その椿の木の根っこへ金がめがあるという夢だどもオラそんげゆめのことなんかあてにならんすけ行ってなんかみない。おまえさんもこのさぶいに、こんげんどこへ立っていないでさっさと家へ帰らっしゃい。」と、言われるってんがの。炭やきはこれはいいことを聞いた。その炭やきってはオレのこんだ。おらとこの裏に白椿の木があるその根っこのこんだ。そう思うて一目散に家へとんで帰ってその椿の根もとを掘ってみたれば、でっこいかめが出てきて中にお金がどっさり入っていたってんがの。炭やきはそのお金で一生安楽に暮したってんがの。
それでいちごさかえ申した。
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