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富川蝶子さんの昔話「逃げだした動物たち」

「逃げだした動物たち」 mukasi

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富川蝶子

逃げだした動物たち

富川 蝶子

 あったてんがの。むかしあるどこにごうぎな身上のいいだんなさまがあったてんがの。そうして馬と犬と猫とにわとりを飼っていらしたってんがの。それがどうしたわけだかしらんども、だんだん貧乏になってきたがだっての。そいでへぇ飼うている動物たちにもいいうまいえさがくれられんようになったてんがの。
そんげんどき馬が、
「あぁあ、おらへぇとしとってしもうていい働きもできねしどうしたこんだやら、近ごろうまい餌ももらわんねんがどっかもうちっといいどこへ行ごうかな」
 と、ひとりごとをいうていたっての。それを犬が聞こえつけて、
「ウマどん、ウマどん、おまえどっかへ行こうかなんていうているが行ぐっけばオレもついて行ってくんねかい。オレもへえ年とってしもうたし、ここのうちはやたら屋敷が広いってがんにいっこう近ごろ手入れもしらんねでオラよう番もしらんねなったし、うまいえさももらわんのなった。どっかへ行くっけばオレもいっしょに行きたいがのし。」
なんて言うてたっての。それをこんだ猫が聞きつけてきて
「これこれ、おまえがた、どっかへ行くなんて相談しているが、オレも仲間にしてくんねいかい。オレもへぇ年とってネズミもようとらんねってがんに近ごろうまいエサももらわんねがんに。」
「そうだない。」と言うてるどこへこんだニワトリもでてきて
「何の相談しているがんだの。どっかへ行くとかいうているが、オレもつれて行ってくれ。」
「そうだな。それではみんなして一緒に逃げだすか。」
 そうして道もようわからんがんにゾロゾロと、あいびはねたってんがの。そのうちに町に行くつもりが山の方へ行ってしもうて日がくれたってんがの。
「アーア、こんげどこで日がくれた。どっかへ泊るどこさがさんばならん。」
 そう言うてみんながあっち見こっち見していったっての。そうしたらむこうの森の方にチカンチカンとあかりが見えるってんがの。
「オイ、あそこにあかりが見えるいや。あこへ行って泊めてもろうことにしようて。」
 そう言うてみんなが元気だしてまたゾロゾロゾロゾロとあいびはねたってが、行ってみたれば、そこは泥棒の家だってんがの。ドロボーどもがぬすんできた宝物やお金をそこらにいっぱいことつんで、てまえ方は酒盛りをしながらバクチを打っていたっての。
「オイ、ここはドロボーのうちだいや。このドロボーをおっぱろうてオレたちが、ここに住むことにしようじゃないか。」
そう言うってんがの。みんなが
「そうだ。そうだ。だどもどうやっておっぱろうかな。」
「オレにいい考えがある。みんなでお化けのかたちになって一どきに大声で鳴いてドロボウをたまがしてやろう。」「そうだ。そうだ。」
 そう言うて馬が立った上に犬がのって犬の上に猫がのって猫の上にニワトリがのったっての。そうしたらおっかねげなお化けみたいな形になったってんがの。
「オイ、一、二、三、でいちどきに鳴いてみようねか。」と言うて
「一、二、三、ヒヒーン、ワンワン、ニャゴニャゴ、コケコッコー!」
ドロボウがたまげて
「ワー! なんだろう。」
と、言うて電気をピチンと消したら丁度そのときお月様が出てきてそのおっかなげな姿が窓にうつったんだんが、また馬が「一、二、三だど」というて
「ヒヒーン、ワンワン、ニャゴニャゴ、コケコッコー!」
と、いちどきに鳴いた。何べんもないたって、ドロボウはたまげて
「ワー、お化けだ。おっかねぇ逃げろにげろ。」
と、みんながいちもくさんに逃げて行ったてんがの。
それで馬と犬と猫とニワトリはドロボウの置いていった宝物やお金でいつまでも仲よく安楽にくらしたってこんだがの。それでいちごポーンとさけた。


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