むかしあったてんがの。あるどこにつぁつぁとかっかとナタて名前のせがれと三人で暮らしていたと。ある日、たぬきが
「うさぎ汁食わしてくれるすけ、鍋貸(なべか)してくれ」
というらと。ナタが鍋貸してやると
「さあさあ、ほっぺたがのげおちるようなうんめいうさぎ汁だ。夕飯(ゆうはん)にいんなで食ってくれ」
そういうんだんが、ナタが蓋(ふた)取ってみたらきったねいたぬきの糞(くそ)がいっぺい入っていたらと。
「うさぎ汁らなんて、鍋もただ借れして、この恩知らずめ」
そういうて、つぁつぁがたぬきの足をつかめて
「ナタやナタ、がんぎのどこから鉈(なた)持ってこい、早く早く」
とつぁつぁがあんまるせかせるんだんが、ナタがまちごうてひしゃく持ってきたと。つぁつぁは
「まぬけめが、おれが鉈取りに行って来るすけ、たぬき逃がさんように押さえていれ」
というて、行ったと。ナタにたぬきが
「おらこの鉈の刃はこれぐらいでっこいぞ」
と両手を広げて見せて、
「ねらこの鉈の刃はどれぐらいだ」
とナタにいうたと。ナタは、
「おらこのがんは、こっげでっこいぞ」
そういうて思いきり両手を広げた拍子にたぬきは
「ばか、あほう、まぬけ」
というて逃げ出したと。つぁつぁは怒(おこ)って、鉈をぐーんと投げたと。その拍子に鉈の刃がたぬきの腹をさらさらっと薄皮剥(うすかわは)いだんだんが、罰があたって、たぬきの腹はぽんぽこ腹太鼓(はらだいこ)が鳴るようになったと。いちがぽんとさけた。
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