むかしあったとさ。あるところにあまい名前の夫婦があったとさ。
「おらほどあまい夫婦はいねいだろう」
と自慢(じまん)していたと。
「おらはサトウカンゾー、かかはサトウミツ」
といっていつもまわりの人に言っていたと。あるとき、二人は旅に出て、あめい名前の人と会ってみたいと思って村を出たと。
あっちこっちあまい名前を尋(たず)ねたども、二人よりあまい名前はなく、鼻を高くしていたと。ほうして幾日(いくにち)が経(た)って、ある一人の坊さんにあったと。
「坊さん坊さん、お前さんはだいぶ旅をしているだろうが、あめえ名前の人知らんかい。おらあサトウカンゾウ、ここにいるかかはサトウミツだが」
それを聞いた坊さんは
「なんだそっげのあめえ名前でしかねえがんか」
というて相手にしなかったと、そうしたら坊さんに、
「世の中こんげにあめい名前はねえと思うているがんに、ききっぱなしてことはねえこて」
というて怒ったと。ほうしたら坊さんは
「おらの名前をきかせたらお前さん方がたまげるすけ、いわんこて」
というたと。二人はどうしても聴(き)かせてくれとせがんだと。坊さんは
「そっげに聞きたけや、いってやるこて。おらの名前はアマ川村のアマ水のアマ寺で、名前はモナカアンだ」
というたと。それを聞いたあまい夫婦はたまげて目がさめたと。そこでいきがすぽんとさけた。
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