爺さと婆さが食いようがねんだんが、婆さが苧(お)を績(う)んで、売りにいぐことになったてや。爺さがそれを町まで売りに行って、帰りしなに子供が鶴をつかめて遊んでいるがん見たと。爺さは、可愛いそげになったんだんが、
「ねらねら、その鶴、俺に売ってくれや」
というて、苧を売った銭でその鶴を買うたと。ほうして、
「鶴や、こっだこんげの子供に捕(つか)まるなや」
というて、たたしてやったと。
爺さは、家に来て、婆さに
「子供が、かわいげな鶴をいじめていたんだんが、苧売った銭で買うてたたしてやったがだ」
というたら、婆さも
「いいこて、いいこて」
というて喜んでいたと。その夜さるに、若い娘が爺さ婆さのうちに、
「とめてくらさい」
というたんだんが、
「なじょうも、なじょうも」
と泊めてやったと。それからいつかたっても行ぎそうもなくて、しめえに、
「ここの子にしてくんねか」
というたと。爺さも婆さも子がいねかったんだんが、子にしてやったと。娘は
「おが毎日機(はた)を織(お)るすけ、機織るどこ見ねえでくんねか」
というて、毎日毎日機織っていたと。そのうちに、
「爺さ、機が出来たすけ、町へ売りにいってくれ」
というんだんが、爺さが売りにいったら、なじょんかいい値(ね)で売れたと。娘は、
「おがもう一反(いったん)織るすけ、ほこ(ここ)へ入っているがん見てくれんな」
と言うて、もうちっとしかない毛で織っていたと。
爺さと婆さは見たくておごとだんだんが、見たら、鶴が機を織っていたと。
爺さも婆さもたまげたと。娘は部屋から出てきて、
「おがあっげに見んなというがんに、もう一反織ろうと思ったろも、見られてしもたすけ、作らんね。あの時、助けられた鶴らろも、お世話になりました」
というて、ぱーっとたっていったと。いちがさらんとさけた。
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