さてあったそうな。大尽の聟取(むこと)り娘が、家の前に書き出しをしておいた。
それには、
「聟の欲しいどこ」
と書いてあった。この書き出しを見て、男が家へ入っていった。家の中はばかげにきれいであったと。
そこへ休んでいたら、家の衆が新しい平鍬(ひらぐわ)に棺桶(かんおけ)かずいてお墓にいったがんが見えたと。墓場へつくと、塔(とう)はねて、死人を掘(ほ)り出し、新しい棺桶の中に死人を入れて、家へ戻って来たと。家の中でその棺を開けて、まないたの上に死人を載(の)せ、包丁で死人の手や足を切って、皿(さら)に盛(も)って出した。ほうして
「ひとつ食ってくんなさい」
というんだんが、気味が悪かったろも、食わんねがんをお茶菓子に出すことはないと思うて、手の先を一つ食ったと。ほうしたら、それは砂糖(さとう)で人間の形に作ったがんだったと。その茶菓子食ったんだんが、そこの衆は喜んで聟にしてくれたと。これでいちがさけた。
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