とんと昔があったげろ。ごうぎのだいろ(大道)で、梨売りが出ていて、そのめぐらで、村中の衆が梨買うて食っていたと。ほうしたら、むこうからぼろぼろの着物着た爺さが来て、梨売りに
「おめえさん、のどがかわいたが、梨一つめぐんでくんねか」
とたのんだと。ほうしたら梨売りが、
「おめみてよのがん(もの)にくれる梨はねよ。ぽっつぉ(へた)でも拾って食っていれ」
と怒鳴(どな)りつけたと。ほうしたら、梨買うていた人の中で、親切な人がいて、梨を二つ買うてあつけたと。爺さは喜んで、その梨を食ってから
「いっとき来てくんねか」
というんだんが、ついていぐと、きれいな野原があって、そこで休んでいたと。ほうして
「俺は、お前さんのおかげで助かったすけ、お礼がしたい」
というがんだと。ほうして、杖(つえ)で穴掘(あなほ)って、梨の種(たね)を入れたら、そこから出た芽(め)が見るまにでっかくなって、でっけえ梨が、じょんならんほどなったと。
その爺さは、
「おれは山の神だが、お前が親切(しんせつ)にしたすけ、お礼をしたがんだ」
というて、山へ戻ってしもうたと。これでいきがすぽーんとさけた。
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