とんと昔があったっつお。大坂の町に鴻の池という家があったと。そこの町に、夜さる人の寝静(ねしず)まったころ、七つ八つの坊主が
「あぶない、おっかねえ。あぶない、おっかねえ」
というて、さびしげに町を歩くがだと。その坊主が、そういうて町中あいぶどきは町中の人が、おっかながって、寝床へもぐりこんで震(ふる)えているがだと。
鴻の池の爺さまは、度胸(どきょう)のいい爺さまだったと。
「こんにゃ、おが坊主のいぐ先を見届けてやろう」
と思うて、坊主のあとをずっとついていって見たと。ほうしたら、坊主は、
「あぶない、おっかない」
というて、下の方へずんずんいぐがだと。暗い闇夜(やみよ)をどこまでもついていってみたら、大川のはたに、でっけえ瓶(かめ)が落ちそげになっていたてがのう。ほうして、よく見たらその子の影がねえがだと。
「こらあ、不思議らざい」
と思っていると、その子が瓶の中につるっと入っただと。爺さまは
「はて不思議な瓶だが、どうしたろう」
と考えてみたと。しかたがねんだんが、鉢巻(はちまき)締めて、さんじゃくほどいて、上の方へ担(かつ)ぎだしたと。ほうしたら、その瓶が
「重たいたって、重たいたって」
としゃべるんだんが、それをこっだ家へ持ってきて、ふたをとってみたと。
ほうしたら、昔の銭が瓶の中にぎっしり入っていたと。家中喜んで、なじょんか大金持になったと。
勇気出してみれや、なんでも金が授(さず)かると。これでいちがすぽーんときれた。
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