とんと昔があったげろ。和尚(おしょう)と小僧が住んでいて、小僧は、和尚にたのまれて、山へお花取りにいったと。その時、和尚が、
「途中でおごと(困った)のことがあったら、これを使いや」
とお札を三枚くれたと。お花を取っているうちに日が暮れてしもうたと。もどろうとすると、外は真っ暗で、遠くにチカチカあかりがするだと。そこへいってみると、中に年よりの婆さが一人いたんだんだが、
「婆さ、道に迷ってしもうたすけ、とめてくんねか」
というんだんが、泊めてもろうたろも、食いもんが一つないがだと。
「これはおかしのどこへ来てしもうた」
と思うて、おっかん(恐く)なったと。
「便所(べんじょ)へいがしてくんねか」
と小僧がいうと、婆さまは、怒って、綱(つな)つけて逃げらんねようにしたと。便所へ入ると、小僧は、和尚からもろうた礼に綱つけて、婆さまが、
「小僧、もういいかや」
と聞くと、
「まだまだびっちびっちのさかり」
というて逃げだしたと。またちいとめると
「小僧、もういいかや」
と聞くと、だっでもいねえ便所の中から
「まだまだ、びっちびちのさかり」
という声がしたと。あんまり出てこねんだんが、婆さまはごう煮(に)やしてとんでいってみたら、綱は札をつけて柱にしばってあったと。婆さまはごうぎに怒って、小僧のあとぼっかけていったと。小僧は追いつかれるとおごとだんだんが、和尚からもろうた札を投げて、
「大川になれ」
というたら、大川ができた。だろも婆さまは、じゃぶじゃぶと音たって、川こざいててきたと。ほうして、またつづかれそげになったんだんが、和尚からもろうた三枚目の札を出して、
「大山になれ」
というたら、でっけえ山ができて、婆さまも越えらんなかったと。そこで、小僧は無事、お寺に戻ってきたと。これでいきがすぽーんときれた。
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