昔あったげだ。一人娘が、いい男に惚(ほ)れて毎晩、娘のどこへ男が通って来たと。あんまりいい男だんだんが、家の衆が、
「あたりめえの男でねえすけ、着物の裾(すそ)へ針(はり)一本刺(さ)してみれや」
と娘にいうて、娘もいう通り糸のついた針をさしたと。ほうして、針についた糸伝うていって見たら、山の中の池へ続いていて、男は池の中にだぼんと入って、大へっびになったと。
男は、体に針刺されてうなっていたと。男の親が、
「おめえは、夜遊(よあそ)びばっか出ているすけそうろう」
というがんが聞こえたと。ほうしたら、男が、
「おれは、あの娘に、子千匹孕(こせんひきはら)まして来たすけ、大丈夫(だいじょうぶ)ら」
というたと。ほうしたら
「いくら子孕ましても、五月の節句(せっく)に菖蒲湯にはいれや、いんな下ってしもうねか」
と男の親がいうたと。この話を聞いていた娘の親ろん(たち)は、
「これはいいこと聞いた」
と思うて、娘を五月の節句に、菖蒲湯に入れたら、蛇(へび)の子をいんなくだして、それで五月四日には、菖蒲湯をたて、家のまわりには、窓々へ菖蒲を挿(さ)すがんだ。魔物(まもの)が、家の中に入らんようにするがんだと。いきがさらーんとさけた。
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