昔あったげだ。秋山の人が十日町から嫁もろうたと。ちょうど雨降りだったんだんが、からかささして来たと。秋山の家の衆は、からかさなんて初めて見たんだんが
「さあおおごっだ。あっげのごうぎのがんさして、家の中へ入らんね」
というで、大さわぎして戸をはずしたりしたと。ほうしたら、嫁は、家へはいるとき、そのからかさをひょこんとしょごめたと。
「町てや、なったらおかしなもんがあるがだい」
というて、秋山の衆はいんなたまげてしもうたと。
十日町で祝言(しゅうげん)のあった晩、夕飯に出された砂糖(さとう)ぼたもちがうまくて、聟はどうろ食ったと。まだ食いたくておごっだんだんが、家の衆がぼたもち入れた瓶(かめ)をどこへしもうやらと見ていたら、戸棚(とだな)にしもうたと。夜さるになって、いんな寝てから、戸棚を開けて瓶出して食ったら、うまかったんだんが、瓶の中に頭つっこんで食っていたと。ほうしたら、こっだ頭出そうとしても出さんねなったと。おごとだんだんが、瓶かぶって便所の隅に隠れていたと。
ほうしたら、そこへ祝言によばれたお客が来て、便所へ入ったろも、紙がなくて、石でけつ拭(ぬぐ)うてそれをぽんとぶちゃったら、ちょうど瓶にあたって、瓶が割れたと。その下に聟が隠れていたんだんが、客はたまげて
「おめえさんまた、どうしてそっげのどこへいるがだい」
ときいたと。聟は、
「ぼたもちが食いたくて戸棚捜したら、瓶の中に入っていて、食ってみたらあんまるうまくてうまくて。瓶の中に頭つっこんで食っていたら、頭が出さんねなってしもうて」
というたと。ほうして、二人は、聟がぼたもち盗み食いしたことと、客が石でけつ拭うたことを決して話さないしようときめたと。
次の朝げ、祝言の席で、そのお客が、「つるかめ」と唄をうとうたんだん
が、聟は、
「瓶のこというと、石のこともいうぞ」
というたと。これでいちがさらーんとさけた。
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