とんと昔があったげろ。秋山の聟が嫁の家にいぐことになったと。仲人(なこうど)は、嫁の家へいっても、聟が馬鹿(ばか)のがん知られると、おごとらと思うて
「おめえ、むこうへいったら、ちょんぼ(男根(だんこん))に縄(なわ)つけてやるすけ、その縄をひっぱったら『さようでございます』というて、ほかの時は、だまっていれや」
というてきかしたと。嫁の家へいって、そこの家の衆が話しるどき、仲人が後で縄をつんつんと引っ張ると
「さようでございます」
というだけで、ほかになんにもしゃべらんかったと。
「さようでございます。さようでございます」
とひまなしにいい出したんだんが、いんながたまげてしもうたと。そこの家のねこが、後の方で縄にじゃらけていただと。これでいきがすぽーんとさけた。
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