昔あったげだ。秋山の人が十日町から嫁もろうて、聟(むこ)が十日町へ呼(よ)ばれていってたと。十日町じゃ喜んで、おっかさんがぼたもちを作ってごっつぉしたと。そのつくるどこに子どもがいて、
「かっか、おんにもくんねか」
というて、やかましいんだんが
「これは、おっかっかというて、ねらは食わんねえがだ」
というて聞かしていたと。これを秋山の聟は寝床(ねどこ)の中で聞いていて
「ここの衆(しょう)は、おっかっかなんかおれに食わして、殺そうとしているがだな」
朝げになって、家の衆はそのおっかっかをさわち(どんぶり)に山ほど盛(も)って、
「さあ、いっぺえ食うてくんねか」
とすすめたども、聟は
「いらん、いらん」
というて、食わんかったと。そこの家の衆は聟が遠慮(えんりょ)して食わんがだと思うて、それを重箱(じゅうばこ)に入れて、風呂敷(ふろしき)に包んでくれたと。聟はおっかねんだんが、
「じゃあ、それを棹(さお)にいつけてくんねか」
と頼んで、長い竿(さお)につる下げて家へもどって来たと。
峠の途中まで来ると、ぼたもちが竿からポトンと落って、二つに割れて、中の白い餅米(もちごめ)がめえたと。聟は、それを見て、おっかっかが口開けて、俺(おれ)を食おうとしているがだと思うて、足ですりつぶして逃げで来たと。ほうして家へ来て、嫁に、
「お前どこの家の人は、俺を殺そうとして、おっかっかというがん食わそうとした」
というたと。嫁は、
「おらこの衆は、お前にごっつぉしてくれようと思ってしたがんで、お前を殺そうとして食わせようなんてしねえごっつぉ」
というてきかせたと。いちがさらーんとさけた。
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