鬼の笑い（新潟県小国町苔野島）| 越後の昔話

「鬼の笑い」　mukasi

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鬼の笑い

苔野島　粕川クラ

　昔あったげろ。あるどこへ昔話じょうずなじさまがあったと。あるどき、じさまが病気になって、死んで、えんまさまの前へつれていかれたと。えんまさまが、
　「おまえ、家へいた時、何していた」
ときくんだんが、じさまは、
　「私は、家にいる時、話が上手で、大ぜいの人笑わせたり、喜ばしたりしたんだすけに、極楽(ごくらく)にゆかせてもらえますこてねえ」
というたと。ほうしると、えんまさまが、
　「そらならぬ。おまえのようなうっそばなしばっか人に聞かせて、地獄(じごく)行きだ」
といったと。じさまは、
　「それはとんでもない。そんげのこといわんで、極楽にやってもらいたい」
といったと。えんまさまは、
　「じぁ、おれのそばにいる鬼は、生まれてからこの方、一度も笑ったことのない鬼だが、この鬼を笑わせれば、極楽へやってもいい」
というと、
　「それはありがたい。それはわけないことだ」
鬼の笑いとじさまがいうて、じさまは、鬼のそばへよって、何いうたかわからんろも、鬼はその話をきいて、ころんだり、起きたりして、笑ったと。えんまさまは、たまげて、
　「おまえ、今、この鬼に何いうてこんげに笑った」
と聞いたら、じさまは、
　「なに、特別のこといったわけではありません、鬼は、来年のこといえば、そんま(すぐ)笑います」
というたと。

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