むかし、あるとこに、びんぼうで、男の子が四人いる家があったと。そこの家はお正月がくるというがんに、びんぼうで餅(もち)をつくこともできねえし、きものをきることもできなかったと。歳取(としと)りの日になって、とっつぁん(父)がちっとばか銭(ぜん)を持って、小千谷(おっぢや)のような町へ、魚を買ってくると言って出かけたと。ほうして、峠にかかると、お地蔵(じぞう)さんが雪にうたれていたと、それを見て、町から笠(かさ)を買ってきて、かぶせてやったと。家に帰ると、かかさ(母)がそれを聞いてごうぎ怒ったと。そうして、夕方になると
「ごめん、ごめん」
と声がして、人がたずねてきたと。出て見ると、大きな男の人が男の子を一人連れてげんかんに立っていたと。かかさはおこって、
「家に子どもが四人もいるがんに、ひとりふえれば五人になる、おごっだ」
と言ったと。男の人は
「この子はなかなか良い子で、この子に願えば、何でも出てくる。名前はうんという名前だからだいじにしなさい」
と言って帰ってしまったと。
そして、元日の朝になったと。さあうんにお願いしようと願ったら、モチも出る、着物も出る、魚も出るで、おお喜びだったと。うんは大変、いたずらっ子だったろも、願えば何でも出るんで、がまんしていたと。だんだんしているうちに、けんかしておごとらんだんが、とうとうとうかかさがうんを殺してしまったと。そうしたら、そこの家は、また、もとのびんぼうになったとさ。
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