むかし、はなとふじが、あったてや。はなは、いまのかかの子で、ふじは、もとのかかの子だったてや。
「ねら、ねら。きょう、栗(くり)まんましてくれるすけに、栗ひろいにいってこいや」
と言ったてんがのう。栗ひろいにいって、遠くの山についたと、そうして、お昼になったと、ふじが
「はなはな。まんまくおうねか」
と言ったと、そうして二人は、腰(こし)かけてダンゴを出したら、はなのダンゴは白いうんめいダンゴで、ふじのダンゴは黒いまあずいダンゴで、ふじが
「はなはな、なあがん、まあげらね(うまそうだね)。一つかえてくれ」
と言ったと。はなは
「おれやられ」
というろも、そっでもかえてくれと言ったと。はなは
「かかにだまってれや、そうしたらかえてやる」
と言って、
「ほうらや」
とダンゴを投げたと。そうしたら、ダンゴは山の坂道(さかみち)をゴロンゴロン、ゴロン、ゴロンゴロンところがっていったと。そうして、ふじは、ダンゴを追いかけて
「ダンゴまて。ダンゴまて」
と行ったら暗くなったと。
「こらまあ、暗くなっておごった」
と思っていたら、向こうの方に明かりがチカンチカンと見えたてや。そして、ふじは、そこへ、
「こん晩(ばん)は」
といったてや。そうしたら、ごうぎな、でっこい、ばさまが火をたいていたと。ふじが
「今晩、一晩泊めてくんねぇか」
と言ったと。ばさまは
「ふじらねか」
とこうぎな声で言ったと。ふじは
「おっだぜ」
と言ったと。ばさまが入って泊(と)まれと言ったので、ふじは泊らせてもらったと。ばさまが
「ふじ何が好きらや」
と言ったと。そうしたら、
「おら、ぼた餅(もち)がいっち好きらぜ」
と言ったと。そしたら、でっけい、なべで、あんこを煮(に)て、朝めしになったら、ぼた餅くわしたと。そして
「ふじふじ、おれの頭におっかねえ、シラミがいたすけに、火ばしで取ってくれ」
と言ったてや。そして頭をわけると、ヘビがちょろちょろ出たてや。それを火ばしではさんで
「はい、ばさ」
とやると、くちゃくちゃと食べたと。そして、きれいにとかしてやったと、そうしたら、ばさまが喜んで
「ふじ、ふじ、良い宝きんちゃくやるぞ」
そして、また、ばさまが言ったと
「ふじ、ふじ何でもほしいものを言って、たたくと何でも出るすけに、何でもほしいときにたたけ」
と言ったと。そうして、ふじが、家にかえると、
「ふじふじ、おらと、かかと、しばや(芝居)見に行ってくるすけに、いす(石臼)ふいて(挽(ひ)いて)くれ」
と言ったと。ふじは
「はいはい」
といすをふいていたと。
そして、はなとかかと、しばや見に行ったころ、ばさまから、もろた、きんちゃくを出して
「いい、着物(きもん)出れ。いい、帯(おび)出れ。いい、下駄(げた)出れ。おしろいも出れ。白足袋(しろたび)もでれ。口紅(くちべに)もでれ。いいかんざしもでれ」
と言った。そして、おしろいつけたり、口紅つけたり、かんざしさしたり、着物を上手に着たりしてから、
「みかん出れ。こうめし(赤飯(せきはん))ひとつ出れ。馬、一頭出れ」
と言うて、ふじは、みかんに、こうめしを馬につけて、自分でも馬に乗って、しばや見に行ったてや。そして、行くと、かかとはなと見ていたと。そうして、ほかの人に、こうめしやみかんをくった(くれた)うも、はなとかかには、なんにもくれねかったと。そして、しばやが終りそうになったら、ふじは、家に帰って、今まで食った物を、また、みんなきんちゃくの中に入れたと。そして、はなとふじが帰って、
「ふじ、おら、しばやおもしろかった」
と言ったと。ふじは、
「おお、いかったなあ」
「でも、なあみていな、あねさがいってたろも、みかんとこうめし持っていって、人にばっかくって、おらとかかには、なんもくれねかっと。だすけに、みかんの皮ひろてきと。なあにもくっどか」
と言ったけど、ふじは
「おら、そんげながんいらね」
というて、いきがぽんときれた。
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