とんとむかしがあったてんがの。正直(しょうじき)で、なじょんか(とても)はたらきもんの、じさまとばさまがあったと。あるろき、じさまあ、やまへ畑仕事(はたけしごと)にでかけたと。あんまくたぶれたんなんが、くわを前において一服吸っていたと。ほうしっと、そこへきれいな小鳥がいっちゃ(一羽)とんできて鍬(くわ)の柄(え)の先にとまったと。じさまあ、あんまきれいな小鳥だったんなんが、
「鳥、鳥、この手の上にとまらんかい」
というたと。ほうしたらその小鳥はちゃんとじさまの手の上にとまったと。
じさまあ、こっだ、へら(舌)出して
「鳥、鳥、おれのへらの上にとまらんか」
とゆうたてんがの。ほうしたら小鳥は、ちゃんと、じさまの、へらの上にと
まったと。そのろき、じさまあ、なんの気なしに、その鳥をごくんとのんでしもうたと。
ほうしたらきゅうにへそのあたりがかあなって(痒(かゆ)くなって)きたと。こらおかしいと思って、だしてみたら、へそのろこへきれいな羽が一本おえたと。その羽を、こつんと、ひっぱると、きれいな声で、
「あや、チュー、チュー、こや、チュー、チュー。にしき、さかずき、ビビラビンとのめ」
というたと。じさまあ、あんまおもしいんなんが、うちへ帰って、ばさまに羽ひっぱってみしたと。ほうしたらやっばりきれい声で、
「あや、チュー、チュー、こや、チュー、チュー。にしき、さかずき、ビビラビンとのめ」
というたと。
さあそのことが村中の評判(ひょうばん)になって、とうとう、お城の殿様(とのさま)の耳へはいったと。めずらしずきの殿様は、そんま(すぐ)じさまをよばって、わけを聞いたと。じさまあ、殿様にわけゆうて聞(か)して、殿様から、へその羽をひっぱってもろうたと。ほうしたらやっぱり
「あや、チュー、チュー、こや、チュー、チュー。にしき、さかずき、ビビラビンとのめ」
というたと。殿様はたまげて
「お前が正直ではたらきもんだすけ、神様がさずけてくれただろう」
というてほうびいっぺいくれたと。そっで、じさまとばさまは一生らくらくとくらしたと。
いちがすぽーんとさけた。
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