「ごめんなんしょ。みなさんお達者でしたか・今晩泊めてもらわれますかいの…」
と、まだ山襞に雪の消え残る春先になると、いつ来るかいつ来るかと待っていた瞽女さ。私とそう年の違わないような手引きの女の子と三人の瞽女さの到来。
大きな荷物を縁先に置き、身軽になって、集落を廻る。その後について歩いていた子供たち。幼い頃の私もその中の一人だった。
夕飯の済むのを待ち構えていた近所の人たちで、広い茶の間もいっぱいになる。
その瞽女さたちの中にまだ若い人がいた。その瞽女さが大好きで、その人のしぐさや語り口調は今でもはっきり覚えているが、父母も他界した後では、「長岡の瞽女さ」というだけで、いくら懐かしくても探しようがなかった。
瞽女さには数々の思い出があったが故に、欣喜して瞽女唄ネットワークに飛びついた。
仲間に入れていただいたおかげで、今回のかつてなかった素晴らしい「越後長岡語りの世界」を拝聴することができ、実に多くの感動を得ることができた。
「雪国の夜語り」は、まさに子供だったころの世界の再現の思いであった。「ごめんなんしょ瞽女の旅路」と我が家に来られたあの瞽女さが重なり、懐かしさにこんなによい記録を後世に伝えるべく努力された関係者の皆様に、心から敬意と感謝を申し上げる。
魚沼からの参加者は異口同音「さすが長岡の会、これだけ豪勢なイベントを開催できるとは、…来てよかった!」長岡市芸術文化振興財団企画に採択されただけの価値のあった内容だったし、市も瞽女唄や昔話など年を経る毎に廃れてしまうものに力をいれるなんてりっぱだよね…」等等。陶酔から冷めやらぬ賞賛の声々々。
また私は、金川真美子さんの成長ぶりにも驚嘆させられた。よくぞここまで修行されたものだと。熱いものが込み上げてきた。
関係者のみなさんと共に立派な後継者の育ったことを喜んでいる一人である。
今後「ごめんなんしょ瞽女の旅路」の後篇を鑑賞できる機会を切望している。
さて、次回はどんなイベントが企画されるか…と想像するのも楽しい。
出典:瞽女唄ネットワーク通信 第57号 2011年12月15日発行