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富川蝶子さんの昔話「ふる屋のもり屋」

「ふる屋のもり屋」 mukasi


富川蝶子

ふる屋のもり屋

富川 蝶子

 あったてんがの。むかしあるどこにじいさとばあさが子馬を飼うて住んでいたってんがの。ある晩のことその子馬を盗って食うつもりで山の狼が出てきて馬小屋へしのび込んでいたってんがの。そうしたらじいさとばあさの話声がしてきたんだんが、狼は耳をすまして聞いていたら、じいさが
「ばあさ、ばあさ、おまえこの世の中で何がいっちおっかねや。」
と、きいていらいたと。ばあさは
「おら、山の狼がいっちおっかね。」と言うていられるんだんが、狼はオレほどえらいもんはいないがんだな、と思うてニャラニャラと笑うていたってんがの。そうしたらばあさが
「そうせばじいさまは何がいっちおっかねの。」
と、きいていられるっての。じいさは
「おら、山の狼なんかおっかんでもないども、おらとこのふる屋のもり屋がいっちおっかねぇでや。」
と言うていらったてんがの。それを聞いた狼が
「さあて、オレよりもおっかない、ふるやのもりやなんてのがここの家にいるってが、いったいなじょなもんだろう。こんげんどこへぐずぐずしていて、そいつに食われたら大ごとだ。はよ逃げんばん。」
と、こそこそと逃げ出したってんがの。丁度そこへ子馬を盗もうと思って馬泥棒が来たってんがの。そうして狼が出て行ぐがを子馬だと思うて背中にとび乗ったっての。そうら狼はたまげてしもうた。オレの背中にふる屋のもり屋がとびのったげだ。食われてしもうたらおしまいだ。何とかしてふり落さんばならんとあっちへとびこっちへとびしてふり落そうとするんだんが馬泥棒は落さんねようにと思うて狼の耳をしっかんかんとつかまっていいして落ちねってんがの。そうして狼が山の方へとんで行ぐうちに夜が明けてきたってんがの。馬泥棒は「この子馬はまあなんてこんげん足が早いがだろうと思うてよくよく見たれば、子馬でのうて狼だってんがの
「こら大ごとだ。狼に食われてしもうたらおしまいだ。」
どっかでとびおりんばねと思うて、あっち見こっち見してたら何でやら枯井戸みとのがあるんだんがそこへどっすんととみこんだっての。狼は喜んで
「ああいいかった。やっとふるやのもりやがオレの背中から落ちてくいた。どんげの奴だかたいじしてくいる。」
と、いうて「オーイ、オーイ。」でっこい声で山の動物どもを呼ばったっての。そうしたらぞろぞろと動物どもがでてきて
「狼さま、何ごとが起きましたかの。」と聞くすけ
「ねらねら、オレは今日ほどおっかね目に合ったことはないや。ふるやのもりやって奴はどんげん奴だかネラ知ってるか。」と聞くども「オラも今はじめて聞いた。」という者ばっかだってんがの。狼は
「今、その枯井戸の中にいる。オレよりおっかねもんだ。みんなしてたいじしてくれや。」
と、言うたと。そこへ猿がとこんとこんと出てきて、
「ほんとうにこの中へいるがんだかの。オレの長いしっぽでさぐってみよう。」
と、しっぽを下げてみたっての。馬泥棒は何だかばっか丈夫げな縄みとうのがさがってきたんだんがそれにつかまって上ろうと思うてしっかんかんとつかまったと。
 むかしは猿のしっぽは三ひろも四ひろもある長いしっぽだってとの。猿は馬泥棒がてまえのしっぽにつかまったんだが
「ようし、引っぱり上げてくれよう。」と言うて顔をまっ赤にしてウンズウンズと引張ったと。あんまり上と下で引張るすけそのうち猿の尻もまっ赤になってしっぽがプツンと切れてしもうて、それから猿のしっぽは短こうなって顔と尻はまっ赤になったがだってこんだがの。ふるやのもりやってはない、家が古くなって雨がもるっていうがんだってこんだがの。
これでいちごポーンとさけた。


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